アカウンティング講座【上級編】第4回:リース会計の新基準への対応
サマリ
2019年に国際会計基準(IFRS16号)が適用され、日本でも2022年4月から新しいリース会計基準がスタートしました。従来は賃借人がオペレーティングリースとして費用処理していた契約も、新基準では資産と負債をバランスシートに計上することが必須となります。この大きな変更により、企業の財務諸表は大きく影響を受けることになったのです。
詳細
新基準導入の背景と目的
リース会計の改革が行われた最大の理由は「透明性」の向上です。従来の基準では、企業がオペレーティングリースを利用することで、実質的な資産や負債をバランスシート上に表示しない会計処理が可能でした。
例えば、月額100万円で5年間のリース契約を結んだ場合、従来は毎月の費用計上のみで、資産や負債は計上されていません。しかし実質的には、企業はその資産を5年間にわたって利用する権利を得ており、支払い義務が存在しています。こうした「見えない債務」が多数存在することで、企業の真の財務状況が不透明になっていたのです。
新基準では、これらの契約も資産と負債として明確に認識させることで、ステークホルダーが企業の実態をより正確に把握できるようにしました。
新基準での主な変更点
新基準では「使用権資産」と「リース負債」という2つの項目が導入されました。
使用権資産とは、リース契約によって企業が得た資産利用権のことです。バランスシートの資産の部に計上されます。一方、リース負債は、将来支払う予定のリース料金の現在価値です。負債の部に計上されます。
具体例で説明します。1,000万円の機械を、月額20万円で5年間リースする契約があるとしましょう。新基準では、契約開始時点で使用権資産1,000万円をバランスシートに計上します。同時にリース負債1,200万円(5年間の支払い総額1,200万円の現在価値)を負債に計上するのです。
財務指標への影響
新基準の導入により、企業の財務指標は大きく変わります。特に影響が大きいのは負債比率です。
従来の基準では見えていなかったリース負債が新たに計上されるため、負債合計が増加します。例えば、年間売上100億円で従来の負債が50億円だった企業でも、リース負債が10億円新たに加わると、負債比率は33.3%から37.5%に悪化することになります。
また、ROA(資産利益率)やROE(株主資本利益率)といった収益性指標にも影響します。資産が増加することで、同じ利益額でもROAが低下する傾向にあります。
さらに、毎年の費用構成も変わります。従来の「賃借料」が「減価償却費」と「利息費用」に分割されるため、営業費用と財務費用の内訳が変わるのです。
企業が取るべき対応策
企業は新基準への対応として、まずリース契約の総点検が必要です。オペレーティングリース契約、サプライ契約、保守契約など、リースに該当するかどうかを判断する必要があります。
次に、現在価値の計算です。将来のリース支払額を現在価値に割り引く際には、適切な割引率を設定することが重要です。企業の借入金利や信用スプレッドを考慮した率を用いる必要があります。
システム対応も急務です。会計ソフトや財務管理システムを新基準に対応したバージョンにアップデートし、使用権資産とリース負債の自動計算機能を組み込むべきです。
最後に、ステークホルダー対応です。株主や債権者、アナリスト向けに新基準による財務数値の変化を事前に説明することで、誤解を防ぐことができます。
中小企業における実務的なポイント
大企業に比べて対応が遅れている中小企業も多くあります。中小企業では、リース契約件数が少ないケースが多いため、まずは重要性が高い契約から優先的に対応することをお勧めします。
また、税務処理との相違点にも注意が必要です。新会計基準では使用権資産を計上していても、税務上はオペレーティングリースのまま費用処理される場合があります。これにより、法人税額に影響が出ることもあるため、顧問税理士との相談が欠かせません。
