アカウンティング講座【中級編】第5回:繰延税金資産と繰延税金負債
サマリ
繰延税金資産と繰延税金負債は、会計と税務の違いから生じるズレを調整する重要な概念です。簡潔に言えば、将来の税金の増減を先取りして記録するもの。企業の真実の利益を把握するには欠かせない知識となります。
詳細
会計と税務のズレが生じる理由
企業は2つの「利益」を計算しています。ひとつは財務会計で使う会計利益、もうひとつは税務申告で使う課税所得です。
これらは異なるルールに基づいているため、同じ取引でも会計と税務で認識される金額が異なることがあります。
例えば、減価償却費を考えてみましょう。会計では直線法で毎年100万円と計上しても、税務では定率法で1年目120万円、2年目90万円となるかもしれません。このような違いが「タイムラグ」を生み出すのです。
繰延税金資産とは何か
繰延税金資産は、将来の税金を減らす権利だと考えてください。
会計上では損失が出ているのに、税務上では利益が出ているケースがあります。この場合、税金を余分に払うことになります。その余分に払った分を資産として計上するのが繰延税金資産です。
具体例を挙げます。貸倒引当金を年間500万円計上したとしましょう。会計では費用として認められていますが、税務上は実際に貸倒れが発生するまで認められません。この500万円に対して、法人税率40%を掛けると、200万円の繰延税金資産が生じます。
つまり、将来貸倒れが実現したときに、税金を200万円分安くできる権利を持っているわけです。
繰延税金負債とは何か
繰延税金負債は、繰延税金資産の反対です。将来支払わなければならない税金の前払いと考えてください。
会計上では利益が少なく見えるのに、税務上では利益が多く見える場合に発生します。このときは税金を過少に払うことになり、その埋め合わせを負債として計上するのです。
例を示します。減価償却資産を100万円で購入した場合、会計上は5年で毎年20万円ずつ減価償却します。一方、税務上は3年で償却可能だったら、1年目は会計33万円に対し税務33万円と同じですが、2年目以降、会計は20万円でも税務では33万円と異なります。
この差分に法人税率を掛けた額が繰延税金負債になります。将来、会計の減価償却期間が終わった後、税務の方が先に終わっているため、その時点で税金を余分に払う必要が出てくるわけです。
テンポラリー・ディファレンスとパーマネント・ディファレンス
会計と税務のズレは大きく2種類に分類されます。
テンポラリー・ディファレンス(一時的なズレ)は、いずれは解消される違いです。上記の減価償却の例がこれに当たります。時間が経てば、どちらも償却が終わり、差がなくなります。繰延税金資産・負債の対象は、このテンポラリー・ディファレンスだけです。
一方、パーマネント・ディファレンス(永久的なズレ)は、解消されない違いです。交際費は会計上は全額費用化できますが、税務上は一定額しか認められません。この場合、将来も差は埋まりませんので、繰延税金は発生しません。
繰延税金資産の評価性引当金
繰延税金資産は、実現可能性の観点から調整が必要な場合があります。
繰延税金資産が200万円あっても、将来の利益がなければ実現できません。その場合、評価性引当金という形で、繰延税金資産を減額します。
例えば、赤字が続く企業で貸倒引当金から生じた繰延税金資産がある場合、将来黒字になる見込みがなければ、この資産を全額または一部評価性引当金で減額するのです。
実務での影響
繰延税金資産・負債は、純利益に大きな影響を与えます。
例えば、会計上の利益が1,000万円でも、繰延税金負債が100万円発生すれば、税金費用は増加し、最終的な純利益は減ります。逆に繰延税金資産が発生すれば、税金費用は減少します。
投資家や債権者は、この調整後の利益を見て企業を評価しているため、正確な繰延税金会計は企業信用にも直結するのです。
まとめ
繰延税金資産と繰延税金負債は、会計と税務のズレから生じる重要な概念です。一時的なズレを調整することで、企業の真実の利益が見えてきます。難しく感じるかもしれませんが、この仕組みを理解することで、財務諸表の読み方がより深くなりますよ。
