アカウンティング講座【中級編】第8回:関連当事者取引の開示
サマリ
関連当事者取引とは、企業とその経営陣や主要な出資者など利害関係にある相手との取引のこと。この取引は特別な利益が生じやすいため、財務諸表で詳しく開示することが求められています。
詳細
関連当事者取引とは何か
関連当事者取引について、まず基本から説明します。これは企業が通常の取引相手ではなく、特別な関係にある人や企業との間で行う取引のことです。
具体例を挙げます。A社の会長の家族が所有するB社から、A社が商品を購入する場合がこれに当たります。または、親会社と子会社の間での取引も関連当事者取引です。こうした取引では、通常よりも有利な価格が設定されたり、不適切な条件で契約されたりするリスクがあります。
関連当事者の範囲
関連当事者とはどの範囲までを指すのでしょうか。日本の会計基準では、以下のような人や企業が該当します。
まず経営陣です。社長や役員など経営に関わる人が対象です。次に主要な出資者で、例えば20パーセント以上の株式を保有する株主などが該当します。さらに親会社や子会社などのグループ企業も含まれます。
重要なのは、直接的な関係だけでなく間接的な関係も対象になるという点です。例えば、経営陣の家族や、その家族が経営する企業との取引も開示の対象となります。
開示が必要な取引内容
では、実際にどのような情報を開示する必要があるのでしょうか。
まず取引の相手先を明確にします。誰と取引したのかを明記します。次に取引の内容です。商品の売上なのか、物資の購入なのか、賃借料の支払いなのか、詳しく記載します。
重要なのは取引金額です。その年度の取引の総額を記載します。例えば、ある子会社との部品の売上が年間で5,000万円あれば、その金額を明記します。
また取引条件も開示対象です。商品価格や支払期限などが通常の取引と異なる場合は、その内容を説明する必要があります。
開示方法と会計基準
関連当事者取引の開示は、財務諸表の注記という形で行われます。注記とは、決算書に添付される詳細な説明書です。
国際会計基準では、IAS24号という基準で関連当事者取引の開示が定められています。日本もこれに準拠する形で、企業会計基準委員会によって詳細なルールが作られました。
上場企業の場合、年度ごとの有価証券報告書に関連当事者取引の詳細な一覧を掲載する義務があります。一般的には、相手先の名称、取引の種類、取引金額、未決済残高などをテーブル形式で記載します。
開示しない場合のリスク
関連当事者取引の開示を怠った場合、企業にはどのようなリスクが生じるでしょうか。
まず会計監査での指摘を受けます。監査人は決算書をチェックする際に、関連当事者取引が適切に開示されているか厳しくチェックします。開示漏れがあれば、決算書の信頼性が損なわれます。
次に金融庁や証券取引所からの行政指導があります。特に上場企業の場合、開示違反は企業統治の不備と見なされ、厳しい対応をされます。実際に過去には、重要な関連当事者取引を開示しなかった企業が、上場廃止勧告を受けた事例もあります。
投資家や債権者からの信頼も失われます。財務情報の透明性に不安を持たれれば、株価低下や資金調達の困難化につながります。
実務での注意点
関連当事者取引を適切に開示するための実務的なポイントをお伝えします。
まず重要なのは、関連当事者を漏れなく特定することです。定期的に株主名簿や組織図を確認し、新たに関連当事者に該当する人や企業が生じていないかチェックします。
次に取引の記録を整理します。営業部門や経理部門で別々に管理されている取引情報を集約し、関連当事者との取引について統一的に把握する仕組みが大切です。
さらに取引の正当性も確保します。関連当事者取引であっても、市場価格と同等の条件で行われるべきです。もし特別な条件での取引がある場合は、その正当な理由を記録しておくことが重要です。
関連当事者取引の開示は、企業の透明性を示す重要な要素です。適切に対応することで、投資家や利害関係者からの信頼を確保できるのです。
