アカウンティング講座【中級編】第18回:IFRSと日本基準の主要な相違点
サマリ
国際財務報告基準(IFRS)と日本の会計基準は、会計処理の考え方が大きく異なります。本記事では、両者の主要な相違点を整理し、実務でどのような影響が生じるのかを具体的に解説します。企業の財務報告の質向上に向けて、両基準の特徴を理解することが重要です。
詳細
IFRSと日本基準の根本的な考え方の違い
IFRSと日本基準(日本GAAP)は、出発点となる考え方が異なります。
IFRSは「原則主義」を採用しています。これは細かいルールを列挙するのではなく、根本的な原則を示し、その原則に基づいて企業が判断する方式です。一方、日本基準は「細則主義」を採用しており、具体的で詳細なルールを定めて、企業がそれに従う方式です。
わかりやすく言うと、IFRSは「方針を示して判断に任せる」、日本基準は「細かいマニュアルを用意する」という違いです。この根本的な違いが、様々な会計処理の相違を生み出しています。
収益認識のタイミングと方法
収益をいつ、どのように認識するかは、企業の利益に直結する重要な問題です。
IFRSでは「IFRS15号」によって、顧客との契約から識別される履行義務を充たした時点で収益を認識します。5つのステップに沿って判断する仕組みです。具体的には、商品やサービスの支配が顧客に移った時点での収益認識となります。
一方、日本基準では出荷基準や検収基準など、より保守的な認識タイミングを採用する傾向があります。例えば、建設業の場合、IFRSでは進捗度法による段階的な収益認識が求められますが、日本基準では竣工基準が選択される場合もあります。
この相違により、同じ取引でも利益計上のタイミングに差が生じ、決算期の利益額に影響を与えることがあります。
棚卸資産の評価方法
商品やその他の在庫の評価方法も両基準で異なります。
IFRSでは、棚卸資産を原価または正味実現可能価額(売却予想価格から販売費などを控除した額)のいずれか低い方で評価します。
日本基準では、原価法または低価法が採用されており、さらに先入先出法(FIFO)、後入先出法(LIFO)、平均原価法など複数の方法が認められています。
後入先出法については、IFRSではこの方法が禁止されています。インフレーションが続く時代背景を考えると、この禁止は国際的な統一性を求めるIFRSの姿勢を反映しています。
固定資産の減価償却と再評価
建物や機械などの固定資産の会計処理も重要です。
日本基準では、固定資産を取得原価で計上し、この金額から減価償却を差し引く「原価モデル」を採用しています。一度記録した金額は、よほどのことがない限り変更されません。
IFRSでは、企業が選択できる会計方針として「原価モデル」と「再評価モデル」の2つが用意されています。再評価モデルでは、定期的に固定資産を時価で評価し直し、帳簿価額を時価に調整します。この方法により、バランスシートの資産額がより現在の市場価値に近いものになります。
のれん(のれん代)の会計処理
企業買収の際に生じる「のれん」の扱いも相違点です。
日本基準では、のれんを一定期間(例えば20年)で償却していく「償却法」を採用します。利益が毎年のれん償却額だけ減少する仕組みです。
IFRSでは、のれんは「償却しない」原則があります。代わりに、毎年、のれんが減損していないかテストを行います。減損が認められた場合のみ、その時点で大きな損失として認識されます。
この違いにより、買収直後の利益計上状況が大きく異なることがあります。
引当金の計上基準
将来の支出に備えて計上する「引当金」も、認識基準が異なります。
IFRSでは「負債性引当金」として、期待値ベースで引当額を算出します。複数のシナリオの確率加重平均を用いるため、より精密な計算になります。
日本基準では、最も可能性の高い金額で引当額を決定する傾向があります。結果として、日本基準の方が保守的になる場合が多いです。
実務における対応策
これらの相違を踏まえ、国際展開する企業や上場企業は複数の会計基準に対応する必要があります。
多くの大企業では、IFRSで作成した財務諸表が主流になりつつあります。これは国際的な投資家の理解を得やすいためです。同時に、日本基準による財務報告も継続している企業が大半です。
会計システムの構築段階から、両基準への対応を視野に入れた設計をすることが、効率的で信頼性の高い財務報告につながります。
