サマリ

2026年6月初旬、金価格は国内で1グラムあたり26,000円前後の高値圏を推移しており、米・イラン間の停戦合意進展を受けて地政学リスクが緩和されつつある状況です。一方、WTI原油は6月初期に87ドル付近と約6週間ぶりの安値圏に下落。中東情勢の緊張緩和がコモディティ市場全体に影響を与えています。

詳細

金価格の現状と変動要因

金価格は2026年に入り、国際市場で過去最高の5,000ドルを超える水準を一時的に突破するなど、歴史的な高値圏を形成しています。国内の店頭小売価格も2026年1月に初めて3万円台を記録し、現在は25,000~26,000円台で推移しています。

この急騰の主要因は、複数の地政学リスクの重なりです。2026年2月以降、米国とイスラエルがイランに対して軍事作戦「エピック・フューリー」を実施し、中東情勢が急激に緊迫化しました。さらにホルムズ海峡の封鎖や船舶被害が相次ぎ、投資家は「有事の金」として安全資産である金を積極的に買い進めたのです。

もう一つの支援材料は米ドル政策の転換です。米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを検討する局面では、ドル安圧力が強まり、ドル建資産である金の相対的な価値が上昇しやすくなります。また、新興国の中央銀行による購入増加、金ETF需要の拡大も相場を押し上げています。

短期的には値動きが荒くなっています。5月4日には米・イラン間の緊張激化で原油価格が急騰し、インフレ懸念の高まりとともに米長期金利が上昇したため、金は逆に4,530ドル台まで下落。しかし翌5日に停戦維持の認識が広がると買いが優勢となり、その後も米・イランの和平接近報道を受けて金先物は4,700ドルを超える水準まで反発しました。このように地政学的な不透明感が解消または悪化する度に、金の売買が激しく動く状況が続いています。

原油価格の動き

原油市場はここ数ヶ月で劇的な変化を経験しています。2026年2月以降、米・イラン間の地政学的緊張がピークとなった際には、WTI原油は高値圏で推移しました。しかし5月下旬から状況が大きく変わります。

5月29日の時点で、WTI原油先物はバレルあたり87.2ドルと、約6週間ぶりの安値を記録しました。米・イラン間の停戦延長と、ホルムズ海峡を通る輸送制限の緩和に向けた予備合意報道が、供給不安を大幅に軽減したためです。5月全体では16~17%程度の下落となっており、地政学的な緊張緩和の効果が如実に表れています。

ただし、復興には時間がかかる見込みです。アナリストは、ホルムズ海峡のクリアリング、損傷したインフラの修復、停止した生産の再開に数ヶ月を要すると警告しており、タンカーの遅延も流れの完全回復を制限する要因となるでしょう。さらにトランプ大統領がまだ合意を正式に承認していないため、交渉の最終決定までには不確実性が残っています。

今後の展望

コモディティ市場は今後、地政学的な不透明感と世界経済の供給・需要バランスの綱引きの中で推移することになります。

金については、市場は強気姿勢を保っています。ゴールドマン・サックスは2026年末時点での金価格を5,400ドル水準と予想しており、長期的な上昇トレンドの継続を見込んでいます。供給制約の深刻化(現在のペースなら17年半で可採鉱物資源が枯渇)と、新興国中銀による購入加速、米ドル安継続の見通しなどが、金の底堅さを支えるでしょう。ただし短期的には値動きが荒くなる可能性が高いため、一時的な下落局面への注意は必要です。

原油については、現在の需給構造が重要です。米国、ブラジル、カナダなど非OPEC加盟国の増産により、世界的な供給過剰が意識される見込みです。アメリカエネルギー情報局(EIA)は2026年のWTI平均価格を約52ドル水準と予想しており、供給が需要を上回る中での緩い価格形成を想定しています。中東の紛争リスクが一段と後退すれば、さらに下押し圧力が強まる可能性もあります。

投資家にとっては、地政学リスクと経済ファンダメンタルズのどちらが主導権を握るかが、今後数ヶ月の相場の鍵となります。

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