サマリ
2025年は過去最多の5,115件、過去最高の35.7兆円というM&A市場を記録しました。2026年6月現在、その勢いは継続し、事業承継型M&A、大手企業の資本効率追求、ロールアップ戦略による地域企業の再編、そしてインバウンドM&Aの急増が市場を牽引しています。クロスボーダーM&Aでは円安環境下でも日本企業による海外買収が活発化し、国家的な支援制度の充実も後押しとなっています。
詳細
日本M&A市場の規模拡大とトレンド
2025年のM&A市場は過去最高水準に達しました。件数では5,115件を記録し、取引金額も35.7兆円と2024年の19.6兆円から約1.8倍に増加しています。この背景には、経営者の高齢化による事業承継ニーズの構造的な拡大、企業の「選択と集中」戦略による再編加速、そして資本効率を重視する経営姿勢の定着があります。
注目の買収案件動向
2026年前半は大型案件が相次いでいます。三井化学による米国の歯科材料企業Ultradentの買収(売上高596億円規模)、SOMPOホールディングスによる米国の損害保険会社アスペン・インシュアランス・ホールディングスの買収(約5,200億円)といった海外買収が見目立ちます。国内では、久光製薬のMBO(3,937億円)といった上場廃止を目的とした案件も活発化しています。
事業承継トレンド:ロールアップ戦略の台頭
中小企業の事業承継では、単なる親族外承継から大手企業や投資ファンドが複数の地域企業を束ねる「ロールアップ戦略」へのシフトが顕著です。エービーシー・マートによる韓国アパレル大手の子会社運営事業取得、ファンコミュニケーションズによるインフルエンサーマーケティング企業の子会社化など、戦略的なポートフォリオ拡充が進んでいます。また、事業承継・M&A補助金が6月中旬から7月下旬にかけて第15次公募を予定しており、最大2,000万円の支援で中小企業の事業承継を強力に後押ししています。
非公開化とMBO・カーブアウトの活発化
セブン&アイ・ホールディングスのような大企業が「資本効率の追求」を名目に事業再編を進める中、TOBやMBOによる上場廃止が新たなトレンドとなっています。これは、市場価値を最大化できない企業であっても買収対象となるという「M&Aの民主化」を象徴しています。同時に、カーブアウト(特定事業の売却)による戦略的な事業再編も増加しており、買い手は新規事業への迅速な参入を実現できるメリットを享受しています。
クロスボーダーM&Aの最新動向
2025年のM&A全体5,115件のうち、日本企業による海外買収(IN-OUT)が市場の約51%を占める18.2兆円を記録しています。注目すべきは、円安環境下(米ドル対円が150円近辺)でもなお、日本企業が積極的に海外進出を続けている点です。従来の欧米大手企業買収から、東南アジア・インドといった成長市場の中堅企業を対象とした戦略的なミドルサイズ案件へシフトしています。マザーサン・グループによるユタカ技研のTOB(2026年3月)など、海外ファンドによる対日投資(OUT-IN)も増加し、インバウンドM&Aの機運が高まっています。
セクター別・業界別の動き
6月上旬~中旬の案件では、医療・ヘルスケア分野(坪田ラボのメディプロデュース子会社化)、食品・飲食業(Trailhead Global Holdingsの弁当事業子会社化)、セキュリティ・警備業界(共栄セキュリティーサービスのグループ拡充)など、多業界にわたるM&Aが活発化しています。DXやデジタル変革への対応を目的とした買収も増加傾向にあり、経営効率化と事業拡張の両立を目指す企業が増えています。
M&A市場の今後の展望
2026年のM&A市場は、2025年の記録を更新する可能性が高まっています。理由として、経営者の高齢化がピークを迎える中、今後10年間にわたる継続的な事業承継ニーズが見込まれることが挙げられます。政府による支援制度の充実(事業承継・M&A補助金の拡充)も市場を後押しし、中小企業層でも参加しやすい環境が整備されています。
クロスボーダーM&Aについては、円安が一定で定着する中「将来の成長への投資」と位置付ける企業が増えており、為替リスクを受容しながらも海外展開を加速させる企業が大半です。特に東南アジアやインドでの案件が活発化することで、新興国市場での日本企業のプレゼンス強化が予想されます。
企業にとっては、M&Aを「ビジネスの最後の選択肢」から「経営戦略の一部」へと認識を改める必要があります。投資家にとっても、大型案件だけでなくロールアップ戦略による地域企業の再編、スタートアップの出口戦略としてのM&Aなど、多様な投資機会が広がっています。2026年下半期は、大型クロスボーダー案件と中小企業の事業承継型M&Aが同時並行で進み、市場全体の活況が続くと見込まれます。
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