サマリ

6月上旬の経済は中東情勢の緊迫化による「エネルギー危機」が主役となりました。国内では日経平均が6月3日に初の6万8000円台を達成した後、5日に5.38%の急落を記録。日銀の6月利上げ観測、米国の半導体売りと金利上昇が同時に襲いかかり、市場は大きな変動期に入りました。

詳細

国内経済の動き

日本経済は目先の停滞期に入っています。6月3日には日経平均が1,717円高の6万8,452円で初めて6万8000円台に乗せましたが、その2日後の5日には一転して5.38%(1,614円安)の大幅下落で6万3,838円まで急失速しました。この急落の背景には三つの要因が重なっています。

まず米国での半導体株売りが波及したこと。次に米5月の雇用統計が市場予想を大きく上回り、失業率が4.3%となったことで米国の利下げ期待が後退し、米10年債利回りが4.522%まで上昇したこと。そして何より重要なのが、日銀が6月15~16日の金融政策決定会合で0.75%から1.0%への利上げを検討しているという観測が急速に高まったことです。

日銀の利上げ観測は、中東情勢悪化による原油高と円安が重なり、物価上昇の圧力が高まっていることが背景です。円は一時160円台まで下落し、1ヶ月ぶりに為替介入前の円安水準に達しています。実は日本経済は1~3月期に前期比年率2.1%のプラス成長を達成していましたが、4~6月期はイラン情勢緊迫化による供給不安で小幅マイナス成長が予想されています。

雇用面では春闘での高い賃上げが実現し、春から実質賃金はプラスに転じる見込みです。しかし原油高による物価上昇が個人消費を圧迫する懸念は残ります。政府による原油備蓄放出や物価高対策の補助金が下支え要因になるでしょう。

世界経済の状況

世界経済は今、エネルギー供給の安定を中心テーマに据えざるを得ない状況になっています。中東情勢の長期化は成長率、インフレ、金融政策を同時に揺さぶっています。

原油はWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で95ドル台まで上昇。産油国グループは7月から日量18万8000バレル規模の増産を決めましたが、中東の海上輸送に制約が残る中では、増産が実際の供給増につながるかどうか不透明です。原油市場は「量の問題」から「運べるかどうか」という地政学リスクに支配されています。

米国経済は底堅さを保っており、1~3月期の成長率は年率1.6%に加速しました。個人消費も設備投資も好調です。ただ米国でも4月のインフレ率が前年比3.8%と約3年ぶりの高い水準に加速しており、FRBが年内の利上げを視野に入れるほどになっています。

欧州はエネルギー輸入依存度が高いため、原油高の打撃が大きく、成長率も加速せず約0.6%の伸びにとどまっています。欧州中央銀行も6月会合での利上げを検討しており、金利は上昇圧力が強いです。一方、中国の景気動向も要注意で、外需は好調ですが内需には弱さが見られます。

米国は通商面でも動きが活発化しており、強制労働対策を理由に複数の貿易相手国に新たな関税(少なくとも10%)を検討しています。これが企業のサプライチェーン組み替えを促し、投資判断の遅れやコスト上昇につながる懸念があります。

今後の展望

世界経済は大きな転換点に立たされています。金利のない世界から金利のある世界への移行が本格化しており、これはセクター間の優劣を大きく変えます。

日本については、6月の利上げが実現すれば政策金利は1.0%となり、日米金利差は約1.5%に縮小します。しかし米国の金利がなお高い水準にあるため、構造的な円安圧力は残存するでしょう。円安が収束するには、米国の景気が落ち着いて金利が順調に下がり続けることが必要ですが、現在のトランプ政権の財政拡張と減税政策では難しいと見られます。

日本経済は目先停滞が予想されていますが、景気回復シナリオそのものが崩れたわけではありません。ホルムズ海峡の緊張が解決に向かえば、7~9月期以降に再びプラス成長へ復帰する可能性があります。ただし、原油が危機前の水準よりも高いままだと、企業収益が圧迫され、消費も伸び悩む状況が続くでしょう。

株式市場では、AI・半導体株など高PER銘柄の調整が一服する時期を見極めることが重要です。同時に銀行や商社といったバリュー株への資金流入も見られ、市場のセクター間バランスが変わり始めています。政府による補正予算編成での国債発行や日銀の利上げペースも注視する必要があります。世界経済の底堅さとエネルギー供給の正常化が、今後の重要なポイントになるでしょう。

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