もっと知りたい!じっくりデザインシンキング講座(中級者編)第19回:よくある失敗と対処法
はじめに
さあ、第19回の講座の内容にまいりましょう。デザインシンキングを実践の場で使おうとしたとき、「なぜかうまくいかない」と感じる瞬間は、誰にでも訪れるものですわ。でも、その躓きこそが、あなたの思考をより深く、より強くしてくれる贈り物でもあります。今回は、中級者がぶつかりやすい「よくある失敗」をひとつひとつ丁寧に取り上げ、その対処法をご一緒に考えてまいりますよ。失敗を恐れるより、失敗を知ることの方がずっと大切ですもの。
サマリ
デザインシンキングの実践では、共感不足・問いの設定ミス・アイデアの収束の早まり・プロトタイプの形骸化・チームの認識ズレといった失敗が起きやすいです。それぞれの失敗には共通の構造があり、適切な対処法を知っておくことで、プロセス全体の質を大きく高めることができます。
詳細
失敗①:共感フェーズが「ヒアリング」で終わってしまう
共感(エンパシー)フェーズは、デザインシンキングの出発点です。しかし中級者がよく陥るのは、インタビューを「情報収集」として処理してしまうことです。質問リストに沿って話を聞き、表面的な回答を整理して終わり、というパターンです。
本来の共感とは、ユーザーの言葉の背後にある感情・文脈・価値観を探る営みです。「なぜそう感じたのか」「どんな状況でそれが起きたのか」を深掘りすることが求められます。
対処法としては、インタビュー後に「共感マップ」を作成する習慣をつけることが有効です。言語・行動・感情・思考の4軸で整理することで、表層的な理解から抜け出すことができます。
失敗②:「問い」の設定が広すぎる・狭すぎる
定義(デファイン)フェーズで作成する「どうすれば〜できるか(ハウ・マイト・ウィー)」の問いは、アイデア発想の方向性を決定する重要な要素です。この問いが大きすぎると発散が制御できなくなり、小さすぎると解決策の幅が極端に狭まります。
たとえば「どうすれば社員が幸せになれるか」は広すぎ、「どうすれば休憩室の椅子を増やせるか」は狭すぎる例です。適切な粒度とは、創造性を刺激しつつも焦点を保てるレベルです。
対処法としては、問いを複数作成したうえで「影響範囲」と「実行可能性」の二軸で評価する方法があります。チームで候補を3〜5個出し、議論して絞り込むプロセスが効果的です。
失敗③:アイデア発散フェーズで早々に収束してしまう
発想(アイデエーション)フェーズでは、量を重視した発散が求められます。ところが、経験がある人ほど「現実的かどうか」で無意識にフィルタリングをかけてしまいます。「それは難しいね」「コストがかかりすぎる」といった評価が早い段階で入ることで、斬新なアイデアの芽が摘まれてしまうのです。
対処法としては、発散フェーズと収束フェーズを明確に分離することが基本です。発散中は一切の批評を禁止するルールを設け、「クレイジーアイデア賞」など遊び心のある評価軸を加えると、心理的安全性が高まります。
失敗④:プロトタイプが「完成品」になってしまう
プロトタイピングフェーズでは、「早く・粗く・安く」が原則です。ところが中級者になると、品質や見栄えにこだわりすぎて、プロトタイプに多大なコストと時間をかけてしまうケースがあります。これでは本来の目的である「学びの加速」が損なわれます。
プロトタイプは仮説を検証するための道具であり、完成品ではありません。紙一枚・付箋・ロールプレイでも十分なことがほとんどです。
対処法としては、プロトタイプを作り始める前に「このプロトタイプで何を検証するのか」を1文で明文化するクセをつけることです。目的が明確になれば、必要最低限の粗さで十分だと判断できるようになります。
失敗⑤:チーム内でプロセスへの理解がバラバラになる
デザインシンキングはチームで行うプロセスです。しかしプロジェクトが進む中で、メンバー間のプロセス理解に温度差が生じることがよくあります。「今どのフェーズにいるのか」「なぜこのアクティビティをしているのか」が共有されていないと、議論が噛み合わなくなります。
対処法としては、各フェーズの開始時に「今日の目的と期待するアウトプット」をホワイトボードに書き出す習慣が有効です。また、フェーズ間の移行タイミングを明示的に宣言することで、チーム全体の意識を揃えることができます。
おわりに
失敗は、あなたがプロセスに真剣に向き合っている証ですわ。今回取り上げた5つの落とし穴は、どれも「知っていれば避けられる」種類のものばかりですもの。ひとつひとつを丁寧に意識しながら実践を重ねることで、あなたのデザインシンキングは着実に深みを増していくはずです。次回もまた、一緒に学んでいきましょうね。以上が、中級者編の総まとめ。
