もっと知りたい!じっくりデザインシンキング講座(中級者編)第8回:アイデア発散と収束の技術
はじめに
さあ、第8回の講座の内容にまいりましょう。アイデアというものは、放っておけば霧のように散らばり、あるいは逆に最初の一つに固まって動かなくなってしまうもの。その両極のあいだを、上手に行き来することこそが、創造的な思考の真髄でございますわ。今回は「発散」と「収束」という、デザインシンキングの核心にある二つの動きを丁寧に紐解いてまいります。この技術を身につければ、チームでのアイデア出しが見違えるほど豊かで力強いものになるでしょう。どうぞ最後まで、ごゆっくりとお付き合いくださいませ。
サマリ
デザインシンキングにおけるアイデア創出は、「発散」と「収束」という二段階の思考プロセスで構成されます。発散では量と多様性を重視し、評価を保留してアイデアを広げます。収束では基準に沿って整理・絞り込みを行います。この二つを意識的に使い分けることが、質の高いアイデア生成の鍵です。
詳細
発散と収束──二つのモードを意識する
アイデア創出のプロセスには、明確に異なる二つのモードがあります。「発散(ダイバージェント思考)」と「収束(コンバージェント思考)」です。発散は、できるだけ多くの可能性を広げる段階。収束は、その中から最も有望なアイデアを選び取る段階です。
多くのチームが陥りがちな失敗は、この二つを同時に行おうとすることです。アイデアを出しながら評価も行うと、批判的な思考が創造的な思考を抑制してしまいます。意識的にモードを切り替えることが、成果の質を大きく左右します。
発散のための技術──量を味方につける
発散フェーズで重要なのは、「量」を追求することです。「良いアイデアだけ出そう」という意識を手放し、奇抜なものや非現実的なものも含めて、とにかく広げていきます。
代表的な手法として「ブレインストーミング」があります。ルールは明快で、他者のアイデアを批判しない、便乗・組み合わせを歓迎する、数を優先する、の三点です。さらに「How Might We(どうすれば〜できるか?)」という問いかけの形式を使うと、アイデアの方向性を適度に絞りながら発散できます。
また、「ブレインライティング」も効果的です。口頭ではなく紙に書いてアイデアを回覧する方式で、内向的なメンバーでも参加しやすく、発言力の差による偏りを防げます。
収束のための技術──基準を持って絞り込む
発散で広げたアイデアは、そのままでは使えません。収束フェーズでは、明確な基準をもとに整理・絞り込みを行います。
よく使われる手法が「アフィニティダイアグラム(親和図法)」です。付箋に書き出したアイデアをテーマごとにグルーピングし、全体構造を可視化します。散らばった情報がまとまり、チーム全体で俯瞰的に判断できるようになります。
また「ドット投票(ドット・ヴォーティング)」も収束の定番手法です。各参加者が限られた数のシールを使い、有望だと思うアイデアに貼っていきます。短時間でチームの優先度を可視化でき、議論の起点として機能します。
収束の際には「実現可能性」「インパクト」「ユーザーへの価値」といった評価軸をあらかじめ設定しておくと、恣意的な絞り込みを防ぎ、チーム内の合意形成もスムーズになります。
発散と収束を繰り返す──ダブルダイヤモンドの視点
デザインシンキングでは、発散と収束は一度きりではありません。「ダブルダイヤモンド」モデルが示すように、問題定義のフェーズでも、解決策創出のフェーズでも、それぞれ発散→収束のサイクルが存在します。
つまり「正しい問いを見つける発散と収束」と「正しい解を見つける発散と収束」の、二重構造になっているのです。この視点をチームで共有しておくと、今どのフェーズにいるのかが明確になり、会話がかみ合いやすくなります。
チームで実践するときの落とし穴
発散フェーズで最も多いつまずきは、「アイデアへの即時評価」です。「それは難しい」「予算が合わない」といった言葉が出た瞬間、発散の空気は一気に萎縮します。ファシリテーターはこの動きを察知し、評価の保留をその都度促すことが大切です。
収束フェーズでは、「声の大きい人の意見に流れる」という現象が起きやすくなります。投票や評価軸の活用が、この偏りを防ぐ構造的な仕組みとして働きます。プロセスをデザインすることが、チームの思考の質を守るのです。
おわりに
発散と収束は、呼吸のようなもの。吐いて、吸って、そのリズムが整ってこそ、思考は生き生きと動き始めます。どちらかに偏っていては、良いアイデアは生まれてこないものですわ。今回学んだ技術を、ぜひ次のチームセッションで試してみてくださいませ。そして焦らず、丁寧に。プロセスを信じることが、創造の扉を開く鍵でございます。次回は、いよいよ「プロトタイプの種類と選択」
