アカウンティング講座【中級編】第2回:のれんの会計処理と減損テスト
サマリ
企業買収の際に発生する「のれん」は、買値と純資産の差額です。この記事では、のれんの計上方法から、毎年実施する減損テストまで、会計処理の全体像をわかりやすく解説します。
詳細
のれんとは何か
企業買収を行う際、買い手企業が支払う金額と、対象企業の資産から負債を差し引いた純資産の金額が一致しないことがあります。このズレの部分を「のれん」と呼びます。
具体例を挙げましょう。A社がB社を10億円で買収したとします。B社の資産が15億円、負債が5億円だった場合、純資産は10億円です。買値10億円=純資産10億円なので、のれんは発生しません。
しかし、同じ状況でも買値が13億円だった場合はどうでしょう。純資産10億円に対して13億円支払っているので、差額の3億円が「のれん」として計上されます。
では、なぜこのような差が生まれるのでしょうか。それは買収対象企業が持つブランド力、顧客ネットワーク、優秀な従業員、技術力など、貸借対照表には記載されない無形資産を評価しているからです。これらの価値が3億円分あると判断されたわけです。
のれんの会計処理方法
のれんは貸借対照表の資産側に無形固定資産として計上されます。多くの企業では「のれん」という科目名で記載されます。
計上されたのれんは、毎年費用化する必要があります。日本の会計基準では、のれんの償却期間は20年以内が目安とされています。先ほどの3億円ののれんであれば、単純計算で毎年1,500万円の償却費が計上されます。
ただし、のれんは実質的には対象企業の超過利益力を表しているため、永久に価値が続くと判断される場合もあります。国際会計基準(IFRS)では、のれんの償却を行わず、毎年減損テストのみを実施する会計処理も認められています。
減損テストとは何か
減損テストは、のれんの価値が実際に保有している価値を下回っていないかを確認するプロセスです。毎年実施することが義務付けられています。
なぜこうした確認が必要なのでしょう。買収時には経営統合による相乗効果や業績向上を見込んでいますが、現実はそうならないことがあります。買収後の経営統合がうまくいかなかったり、市場環境が悪化したり、対象企業の業績が期待を下回ることもあります。そうした場合、支払ったのれん相当額の価値が失われているわけです。
減損テストの実施手順
減損テストは主に二つのステップで進みます。
まず「スクリーニング段階」です。のれんが計上されている事業単位や現金生成単位が、減損の兆候を示していないか確認します。例えば、営業利益が大幅に減少している、市場需要が急落しているなどです。
次に「測定段階」です。減損の兆候がある場合、その事業の「回収可能価額」を計算します。回収可能価額とは、その事業を保有し続けることで得られる割引キャッシュフローの現在価値か、売却した場合の値段のどちらか高い方です。
帳簿価額(のれんを含めた資産の簿価)が回収可能価額を上回っていれば、その超過額が減損損失として認識されます。
減損テストの具体的な計算例
実例で見てみましょう。5年前に20億円ののれんを計上した企業があります。毎年1億円の償却を行い、現在の帳簿価額は15億円です。
減損テストの結果、今後のキャッシュフロー予測で回収可能価額が8億円と判定されたとしましょう。帳簿価額15億円>回収可能価額8億円となるため、差額の7億円を減損損失として計上する必要があります。
この7億円は費用として当期の利益を減らします。実は、買収時点での過度な価値評価がここで是正されるわけです。
経営判断への影響
のれんと減損テストは、企業の財務報告に大きな影響を与えます。大規模な減損損失は利益を大幅に押し下げ、株価や経営判断に影響を及ぼします。
経営陣にとっては、のれんの計上額をどうするか、減損テストにおける回収可能価額をどう見積もるかが、重要な会計判断になります。
のれんと減損テストの理解は、買収企業の財務諸表を読む際に不可欠なスキルです。会計知識を深めるうえで、ぜひ押さえておきましょう。
