【ハルキゲニ男の未攻略ゲーム愛】2026年08月30日の気になる1本
今日の1本
…ハルキゲニ男です。気になるゲームを紹介します。今日紹介するのは、「クトゥルフ神話TRPG」(Call of Cthulhu)だ。ジャンルはTRPG(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)。原著はアメリカのケイオシアム社が1981年に発表した作品で、日本では2004年にホビージャパンから訳出されたクラシック版が、そして2019年には大幅改訂された新版『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』がKADOKAWAから発売されている。いまも現役で遊ばれている、息の長いシステムなんだ。
どんなゲーム?
日曜なのでアナログゲーム・TRPGの話をする。クトゥルフ神話TRPGとは何か。ひと言で言えば、「普通の人間が、理解不能な恐怖と向き合うホラーTRPG」だ。
一見、普通の人々が恐るべきクトゥルフ神話の脅威に立ち向かう、神秘と恐怖のTRPGだ。各プレイヤーが自分で作ったキャラクターを演じ、進行役とも相談しながら物語を進めていく対話型のアナログゲームなんだ。能力値・技能値はパーセンテージで表され、判定は100面ダイスを振り、技能値以下の出目が出れば成功という単純な仕組みだ。ダンジョンに潜って敵を倒すことよりも、手がかりを集めて真相にたどり着くことに重心が置かれている。
そしてこのゲーム最大の特徴が「SAN値(正気度)」というシステムだ。SAN値は、探索者の精神状態を表す能力値で、神話生物との遭遇や常識では理解できない出来事によって減少し、値が低くなるほど狂気に陥る危険性が高まる。神話生物に遭遇したり、神話知識を得ることでこの値は減少していき、減少幅が大きければ一時的に発狂してしまい、ゼロになると永久的発狂となりキャラクターとしての死を迎える。事件を解決するには深入りしなければならない。しかし深入りするほど正気を失う。この二律背反の構造こそが、このゲームの本質なんだ。
ゲニ男が気になる理由
H.P.ラヴクラフトという作家の名前を知っているか。20世紀初頭のアメリカの怪奇小説家で、コズミック・ホラー(宇宙的恐怖)という概念を生み出した人物だ。人間の知性など、宇宙的スケールの存在の前では無意味に等しい——その虚無的な恐怖観がそのままゲームシステムに落とし込まれているのが、このTRPGなんだ。
正気度ポイントが少なくなると、次の正気度ロールの成功率が下がる。恐怖を体験するほど、恐怖への耐性が下がっていく。ある意味破滅的なルールだが、これがクトゥルフ神話TRPGの醍醐味のひとつだ。プレイヤーキャラクターが英雄的に強くなっていく既存のRPGとは、根本的に設計思想が違う。
また、日本の帝国時代やヴィクトリア時代のイギリスを舞台に遊ぶためのソースブック、猫になって探索を楽しむもの、原始時代・平安時代・幕末の探索者になって楽しめるものまで存在する。2026年のいまもコミュニティは活発に動いている。枯れていない。まだ広がり続けているシステムなんだ。
さらに言えば、2026年2月には「新クトゥルフ神話TRPG」のシナリオブランド「七伏市奇譚」に登場する架空の都市「七伏市」と、静岡県掛川市が姉妹都市提携を締結するという出来事まであった。フィクションが現実の行政を動かすほどの文化的影響力を持つ作品だ。これは無視できない。
こんな人にやってほしい
ホラーが好きな人にはもちろん刺さるはずだ。ただ、それだけじゃない。推理・謎解きが好きな人、小説を読むのが好きな人、仲間と一緒に物語を作ることが好きな人にも向いている。キャラクターが強くなるゲームじゃない。むしろ弱くなっていく。でもその「弱さの物語」が、他のゲームでは絶対に味わえない独特の面白さを生むんだ。
初心者なら、まず無料で配布されている『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』から入るといい。公式アプリでも気軽に読み始められる。ハードルは想像より低い。
「対話でゲームを作る」という体験を、まだしたことがないなら——やってみる価値はある。…以上。
