2026年07月02日のM&A動向まとめ
サマリ
2026年上半期のM&A市場は、2025年の過去最高水準(5,115件、35.7兆円)の勢いを引き継いでいます。中小企業の事業承継型M&Aが件数を牽引する一方で、調剤薬局やIT・医療介護などの特定業界での買収が活発化。海外買収(IN-OUT型)も依然として高水準で推移し、テクノロジーやエネルギー分野での大型案件が相場を押し上げています。
詳細
国内M&A市場の現在地
2026年1~3月期のM&A件数は約1,295件と前年同期比9.6%増加し、金額ベースでも65.3%増(約8.3兆円)を記録しました。特徴的なのは、大型案件よりも「ミドルサイズ」(数億円~数十億円規模)の案件が主流になっていることです。数千億円規模のメガ案件から、地域シェア拡大や技術獲得を目的とした中堅企業向けM&Aへシフトしているため、より多くの企業に買収チャンスが広がっている状況です。
注目の買収案件とトレンド
2026年1月以降の大型案件では、三菱商事による米国天然ガス開発大手ヘイインズビル・リソーシズの買収(約1.2兆円)、日本製鉄によるUSスチールの買収(約2兆円)などが相場を形成しています。国内では久光製薬のMBO(約3,900億円)やセブン&アイ・ホールディングスのグループ再編など、非公開化やポートフォリオ再編が活発です。
業界別では、IT・システム開発会社への買収が急増しており、DX推進やAI人材確保が主要な買収動機となっています。AI導入が「実験段階」から「実用段階」へ移行する中、システムエンジニアの不足を補うために大手企業が技術力のある中小企業を高値で買収する傾向が強まっています。
医療・介護・調剤薬局も引き続き好調です。後継者不足に悩む地方の小規模事業者が大手グループの傘下に入り、採用力強化やDX効率化を図るケースが急増。地域一番店や特定エリアに強い企業は高値での売却が実現しやすい「売り手市場」が形成されています。
事業承継トレンドと政府支援
事業承継は引き続きM&A市場の「下支え」役として機能しており、中小企業の後継者不在率は約50%と深刻な状況です。ただし最新のトレンドとして、単なる親族承継ではなく、大手企業やファンドが地域企業を「ロールアップ」(複数企業を束ねる戦略)する事例が増加しています。これにより地方の独自技術や経営資源が広域ネットワークで再活用される循環が生まれています。
政府の支援策も充実しており、事業承継・M&A補助金の15次公募(2026年6月中旬~7月下旬申請受付予定)では、仲介手数料やPMI費用のほか、設備投資まで最大2,000万円の補助が可能です。新設の「小規模売り手支援類型」により、年商数億円以下の小規模事業者もM&Aで事業継続の選択肢を得られるようになりました。
クロスボーダーM&Aの最新動向
日本企業による海外買収(IN-OUT型)は円安環境下でも高止まり状態が続いており、戦略的な「質の高い」案件への厳選姿勢が強まっています。従来のようなメガ案件中心から、東南アジア・インドの成長企業を狙うミドルサイズ案件へシフトしており、シンガポール・ベトナム・タイなどのASEAN諸国がターゲットの中心です。
一方で海外企業による日本企業買収(OUT-IN型)も増加傾向にあります。円安定着と日本企業の割安感(株価純資産比率改善の余地)を背景に、グローバルファンドや海外企業による買収攻勢が強まっており、特にIT・ヘルスケア・半導体関連分野での案件が目立ちます。
M&A市場の今後の展望
2026年下半期のM&A市場は、構造的な「売り手市場」の傾向が一層強まると予想されます。経営者の高齢化(2025年に245万人の経営者が70歳以上に達した)が避けられない現実であり、事業承継ニーズは急速に膨らむためです。特に2027年末が事業承継税制の最終期限となることから、駆け込み的な相談・交渉が増加する可能性があります。
業界別では、人手不足が深刻な建設・物流業、再編が加速する調剤薬局・ヘルスケア業界での買収価格の高騰がさらに進むと見込まれます。一方で「2024年問題」「2025年問題」への対応ができない企業と、M&Aでリソースを獲得する企業の二極化が決定的になるフェーズへ突入しています。
投資家・企業側の課題としては、「案件の量」から「自社が選ばれるための準備と戦略」へシフトする時代が来たことです。企業価値の客観的な評価、決算書に表れない「知的資産」や「組織力」の見える化、ESG対応など、M&A後の成長を見据えた先制的な準備が成否を分ける要素となります。
