2026年06月30日のM&A動向まとめ
サマリ
2026年6月のM&A市場は引き続き活況です。国内企業間の事業承継型M&Aが約4,000件超の高い水準で推移する一方、大型クロスボーダー案件やスタートアップの買収も好調。特に医療・介護・製造業での人材確保を目的とした買収、DX推進に向けたIT企業買収が市場を牽引しています。
詳細
6月の注目買収案件と業界動向
6月中旬から下旬にかけて、複数の大型・中型M&A案件が公表されました。医薬品業界では創薬企業のジーエヌアイグループが中堅医薬品メーカーのあゆみ製薬ホールディングス(売上高385億円)を子会社化し、収益源の多様化を図りました。
家電量販業界では業界1位のヤマダホールディングスと5位のエディオンが2027年10月の経営統合で基本合意。両社合計で売上高約2兆5000億円の巨大グループが誕生し、業界再編が加速しています。
防衛・ドローン分野ではTerra Droneがウクライナの企業Amazing Dronesを買収し、防衛装備品市場への本格参入を強化。グローバル展開とAI技術の内製化を加速させています。
事業承継型M&Aの活況と国の支援制度
中小企業の後継者不足問題を背景に、事業承継型M&Aが市場全体の約8割を占めています。2026年6月中旬からは「事業承継・M&A補助金(15次公募)」の申請受付がスタート。最大2,000万円までの補助が可能で、仲介手数料やデューデリジェンス費用、PMI(経営統合)費用まで幅広くカバーされています。
税制面でも朗報があり、「特例事業承継税制」の提出期限が2027年9月30日まで1年6カ月延長されました。これにより、手続きを間に合わせるチャンスが増えています。
DXとAI技術獲得を目的とした買収の加速
製造業やサービス業を中心にDX推進を目的とした買収が活発化しています。ソフトウェア企業やAI技術を保有するスタートアップの買収が増加傾向。単なる売上拡大ではなく、自社にない技術やビジネスモデルを取り込む「探索型」M&Aが主流になっています。
クロスボーダーM&Aの最新動向
円安環境が続く中でも、日本企業による海外買収(IN-OUT型)は高い水準で推移しています。三菱商事が米国天然ガス企業を約1.2兆円で買収するなど、脱炭素化やエネルギー転換関連の大型案件が目立ちます。
かつてのメガ案件中心から、東南アジアやインドといった成長市場の中堅企業を狙うミドルサイズ案件へシフトしています。シンガポールはASEANのハブとして引き続き人気で、日本企業による東南アジア向けM&Aの約4割がシンガポール経由です。
一方、海外企業による日本企業買収(OUT-IN型)も増加。円安で割安になった日本企業への関心が高まり、グローバルファンドなどの投資が加速しています。
M&A市場の今後の展望
2026年通期でのM&A件数は、5,000件超の過去最高達成が確実視されています。件数ベースの成長は中小企業の事業承継案件が支えており、特に製造業・医療・物流業界での案件が活発です。
金額ベースではクロスボーダーM&Aが主導権を握り続けており、大型案件は限定的になる傾向です。これは「量」から「質」への転換を意味しており、企業価値向上や技術獲得といった戦略的な買収が評価される環境が定着しています。
企業や投資家が注目すべきポイントは3つです。第一に事業承継需要の構造的な下支えが継続する一方で、不採算事業の売却・カーブアウトが加速する点。第二にDX・脱炭素・ヘルスケアなど成長領域への選別投資が進む点。第三に海外資本による日本企業買収が増加する「インバウンドM&A」への対応が急務となる点です。
2026年後半にかけて、セブン&アイ・ホールディングスなど大企業の事業再編や非公開化の動きが継続すると予想されます。M&Aの民主化が進む中で、歴史ある大企業でも市場価値を最大化できなければ買収対象となる時代が到来しています。経営者の早期準備と専門家との連携が、M&A成功の鍵になるでしょう。
