今日から学ぶサクッと量子コンピュータ講座【初級編】第9回:量子コンピュータの種類と実装方法
サマリ
量子コンピュータは複数の実装方法が存在します。超電導方式、イオントラップ方式、光子方式など、各々に異なる特性と課題を持っています。本記事では、主要な量子コンピュータの種類と実装方法をわかりやすく解説します。
詳細
量子コンピュータが複数の方式に分かれる理由
量子コンピュータを作ろうとする研究機関や企業は世界中に約400社存在しますが、皆が同じ方式を採用しているわけではありません。なぜでしょうか?
それは、量子ビット(キュービット)を実装する方法が複数あるからです。キュービットは、0と1の両方の状態を同時に保つ必要があります。この性質を「重ね合わせ」と呼びます。しかし、この重ね合わせ状態はとても不安定で、わずかな外部干渉で壊れてしまいます。
異なるアプローチで、この課題に向き合っているのです。
超電導方式:実用化が最も進んでいる
現在、最も実用化が進んでいるのが超電導方式です。企業ではIBMやGoogle、国内ではリクルートやNTTが採用しています。
この方式では、超電導回路に電磁波を照射してキュービットを操作します。金属を極低温(マイナス273℃に近い温度)まで冷却することで、電気抵抗がゼロになる「超電導状態」を利用するんです。
メリットは、実装技術が成熟していて、製造コストが比較的安いこと。デメリットは、冷却に莫大なエネルギーが必要で、キュービット数が増えると干渉が増えることです。現在の最先端機種でも、実用的なキュービット数は50~100個程度に留まっています。
イオントラップ方式:正確性が高い
イオントラップ方式は、イオン(電子が1個足りなくなった原子)を電磁場で浮かせて保持し、レーザーで操作する方式です。Honeywell Quantumやアルプスアルパイン、日本企業では大学発ベンチャーが開発を進めています。
最大の特徴は、操作の正確性です。超電導方式では99~99.9%の正確性に対し、イオントラップ方式は99.9~99.99%の精度を実現できます。
また、同じ条件下なら全てのキュービットが完全に同じ性質を持つため、スケーラビリティ(規模拡大)に有利です。デメリットは、複雑な装置が必要なため製造コストが高く、1つのキュービット操作に時間がかかることです。
光子方式:常温で動作可能
光子(光の粒)を使ってキュービットを実装する方式もあります。Xanadu社やPhotonic社が開発を先導しています。
最大の利点は、常温で動作可能なことです。他の方式が極低温を必要とするのに対し、この方式は室温で動作できるため、運用コストが大幅に削減できます。
ただし、光子を操作・検出する技術はまだ発展途上です。検出効率が低く、現実的なキュービット数の実現には技術革新が必要とされています。
その他の有望な方式
研究段階では、他にも複数の方式が模索されています。
トポロジカル方式は、特殊な物理現象を利用して外部干渉に強いキュービットを実現しようとしています。量子ドット方式は、個々の電子スピンをキュービットとして使う方式です。中性原子方式は、レーザーで冷却した中立的な原子をピンセット状の光で配置する方式で、複数のスタートアップが取り組んでいます。
方式選択の現在地
2024年時点で、超電導方式とイオントラップ方式が競争の中心にあります。超電silon導方式は数が多く、開発スピードが速い。イオントラップ方式は正確性を武器に、特定の用途での優位性を狙っています。
光子方式や新興方式は、次世代の主流になる可能性を秘めています。ただし、常温動作という利点を活かすには、まだ5~10年の開発期間が必要と見られています。
結論として、「最高の方式は存在せず、用途に応じて最適な方式を選ぶ時代」が到来しているのです。今後も複数の方式が並行して発展していくでしょう。
