2026年06月10日のM&A動向まとめ
サマリ
2026年6月時点で、日本のM&A市場は年間5,000件超の高い水準で推移しており、市場は「件数の拡大」から「質の高度化」へと転換しています。事業承継型M&Aや中小企業案件が市場全体の約7割を占める一方で、DX・GXを目的とした戦略的投資やクロスボーダーM&Aが新たなトレンドとなっています。
詳細
注目の大型買収案件の進展状況
2026年1月には、久光製薬のMBOが約3,937億円で成立し、三菱商事による米国の天然ガス開発会社への買収が約1兆1,941億円で実行されるなど、大型案件が相次いでいます。また、SOMPOホールディングスは米国の損害保険会社アスペンを約5,200億円で完全子会社化する計画を進めており、グローバル事業拡大の動きが加速しています。
食品業界では、カレー専門店の壱番屋が札幌発祥の「夜パフェ専門店」を取得し、新業態の統合を進めています。IT・デジタル関連でも、マネーフォワードがアウトルックコンサルティングのTOBを完了し、DXサービスの拡充を図っています。
事業承継トレンドの最新動向
事業承継M&Aは2025年11月末時点で945件に達し、既に過去最高水準を更新しています。団塊の世代が全員75歳以上となり、中小企業の60歳以上の経営者が過半数を占める中、後継者不在による廃業リスクに直面している企業が増加しています。
政府の事業承継・M&A補助金は15次公募で新たに「小規模売り手支援類型」を追加し、最大150万円の補助により小規模事業者でも活用しやすくなりました。事業承継税制の特例措置期限も2027年12月まで延長されており、企業経営者にとって有利な環境が整っています。
調剤薬局業界では、大手グループによる中小規模事業者の買収が引き続き活発です。物流・運送業界でも、2024年問題への対応とドライバー不足を背景に、業界再編を目的としたM&Aが加速しています。
クロスボーダーM&Aの最新情報
円安環境下にもかかわらず、日本企業による海外企業買収(IN-OUT型)は高水準を維持しており、単なる売上拡大ではなく、自社にない技術やビジネスモデルを取り込む戦略的な「探索型」M&Aが主流となっています。
東南アジアやインドといった成長著しい市場での中堅企業買収が増加し、かつてのメガ案件中心から、数十億円規模のミドルサイズ案件が重視される傾向にあります。2025年のクロスボーダーM&A全体の件数は前年比8.8%増で、金額ベースでは74.7%の大幅増加を記録しており、グローバルプレゼンスの強化が急速に進んでいます。
2026年1~3月期のM&A件数は1,295件で、前年同期から9.6%増加し、引き続き過去最高水準を更新しています。MBOなどの非公開化案件や上場企業同士の再編も活発化し、市場全体で質を重視した取り組みが加速しています。
M&A市場の今後の展望
2026年は2025年の「買収提案元年」の流れを引き継ぎながら、M&Aが「自然な経営判断」として一層定着する年になる見通しです。年間5,000件超の高水準が続くと想定される一方で、金利上昇による調達コスト増加への警戒が必要です。
特に上場企業では、資本効率や事業ポートフォリオ見直しの圧力を背景に、カーブアウトや非公開化といった再編が進みやすい環境となっており、PEファンドやアクティビスト・ファンドの役割がますます重要になっていくでしょう。
経営者の高齢化と後継者不足が同時進行する環境下で、M&Aは追い込まれてからではなく、余力のあるうちに検討する経営戦略へと位置づけられています。企業価値を左右する「準備型M&A」という考え方が重視されており、DXやGXといった社会構造の変化に対応するための変革手段として、M&Aの戦略的活用がさらに不可欠になっていくと予想されます。
