経営戦略講座【中級編】第12回:イノベーション戦略の組織化と実装
サマリ
イノベーション戦略を単なる理想論で終わらせず、組織全体で実装するには、明確な仕組みづくりが欠かせません。本記事では、優良企業が実践している組織化と実装のポイントを、具体的な事例を交えて解説します。
詳細
なぜイノベーション戦略は失敗するのか
多くの企業がイノベーション戦略を掲げながらも、実行段階で失速してしまいます。理由は単純です。戦略を立てるだけで、それを組織に根付かせる仕組みがないのです。
調査データによれば、経営層が立案した戦略が現場で実行される確率は約30%にとどまると言われています。残りの70%は、組織の抵抗、予算不足、人材不足などの理由で挫折しています。
イノベーション戦略も例外ではありません。むしろ既存事業の維持に追われる現場では、新しいチャレンジが後回しになりやすいのです。
組織化の第一歩:専門部門の設置
イノベーション戦略を実装するには、まず担当部門を明確化する必要があります。Google、Amazon、Appleといった先進企業は皆、イノベーション専門の部門を設けています。
この部門の役割は、新規事業開発を推進するだけではありません。既存部門との調整役として機能することが重要です。経営層と現場をつなぐパイプになるわけです。
具体的には、イノベーション部門のスタッフは、営業、企画、製造など複数の部門から選抜した人材で構成することをお勧めします。各部門の事情を理解した人材がいれば、説得力が高まります。
予算配分の仕組みづくり
イノベーションには、ある程度の自由度が必要です。だからこそ、予算配分の仕組みが大切なのです。
アメリカの調査では、売上高の5~10%をイノベーション関連に投資している企業が、成長率が高い傾向にあります。日本企業平均は2~3%程度で、まだ投資が不十分な状況が続いています。
予算配分では、短期的な成果を求める「本業強化枠」と、中長期的なリターンを見込む「新規事業枠」に分けることが有効です。新規事業枠では、失敗を許容する文化を醸成することが重要です。失敗率が低い企業は、実は革新性が低い可能性が高いのです。
人材育成と評価体制の工夫
イノベーション戦略を支える最大の資産は人材です。しかし、多くの企業の人事評価制度は、短期的な成果を重視するあまり、イノベーション活動を阻害しています。
改善が必要な点は三つです。第一に、評価期間を複数設定することです。通常の年間評価に加えて、3年~5年のスパンで新規事業の成果を評価する仕組みを導入する企業が増えています。
第二に、失敗を学習の機会として評価することです。大きな失敗から得られた教訓が、次のチャレンジを成功させる可能性は高いのです。
第三に、イノベーション関連の異動を、キャリア上で「プラス」と見なすことです。新規事業に挑戦した経験は、その後のリーダーシップを大きく高めます。
実装フェーズの管理方法
戦略を実装する際には、段階的なアプローチが効果的です。スタートアップの手法として知られる「リーン手法」を取り入れる企業が増えています。
具体的には、以下のサイクルを短期間で何度も繰り返します。①仮説を立てる、②試行錯誤する、③検証する、④改善する。このサイクルを1~2週間のスパンで回すことで、時間をかけずに最適解に近づけるのです。
大型プロジェクトでは、このサイクルが3~6ヶ月かかることも多いため、大幅なスピードアップが期待できます。
組織全体への浸透戦略
最後に重要なのが、イノベーション文化を組織全体に広げることです。トップダウンで押し付けるだけでは、現場の抵抗感は消えません。
効果的な手法は、成功事例を組織内で積極的に共有することです。部門横断の勉強会やワークショップを定期的に開催し、イノベーションの事例やマインドセットを学ぶ機会を提供します。
さらに、全社員がイノベーション活動に参加できる環境づくりも大切です。提案制度を充実させ、良い意見には予算と時間を配分する。このような仕組みが整えば、組織全体がイノベーション志向になるのです。
イノベーション戦略の成否は、その内容よりも、いかに組織に根付かせるかで決まります。今回紹介した仕組みを参考に、自社に合ったアプローチを取ってみてください。
