今からでも間に合う!サクッと脳科学講座(初心者編)第4回:記憶はどこにある
はじめに
さあ、第4回の講座の内容にまいりましょう。あなたは今日、何を朝ごはんに食べましたか?ずっと昔の懐かしい思い出は、今もどこかにしまってありますか?「記憶」というものは、不思議なほど私たちの暮らしに寄り添っています。今回は、その記憶がいったいどこに宿り、どのように刻まれるのかを、一緒にのぞいてみましょう。きっと、ご自身の頭の中がほんの少し、愛おしく感じられるはずです。
サマリ
記憶は脳の特定の一か所にあるわけではなく、複数の場所が協力し合って保存されています。特に「海馬」と「大脳皮質」が大切な役割を担っています。短い記憶が長い記憶へと育つ仕組みを知ると、日々の学びや体験の大切さがよくわかります。記憶の不思議な世界を、やさしく丁寧にご案内します。
詳細
記憶は「一か所」にしまわれているわけではない
まず、大切なことをお伝えします。記憶は、脳のどこか一か所に整然とファイリングされているわけではありません。
たとえば、パソコンのハードディスクのように「記憶フォルダ」があるイメージを持つ方も多いのですが、実際はそれとは少し違います。
記憶は脳のさまざまな部位が協力し合い、まるでチームワークで支えています。大事なのは「どの部位が何を担当しているか」を知ることです。
「海馬」は記憶の入り口
脳の中に「海馬(かいば)」という部位があります。名前のとおり、形がタツノオトシゴに似ていることからそう呼ばれています。
海馬の役割は、新しい出来事や情報を一時的に受け取り、整理することです。いわば、記憶の「受付窓口」です。
たとえば、今日初めて会った人の名前や、初めて行った場所の景色は、まずここに届きます。ただし、海馬に届いただけでは長続きしません。大切な情報だけが、次のステップに進んでいきます。
記憶が「長持ち」するには、くり返しが大切
海馬に届いた情報は、やがて脳の広い部分である「大脳皮質(だいのうひしつ)」へと移っていきます。ここが、いわば記憶の「長期保管庫」です。
この移動が起きやすいのは、同じ情報を何度もくり返し使ったときや、睡眠中に脳が情報を整理しているときです。
つまり、何かを覚えたいときはくり返し思い出すことと、しっかり眠ることがとても大切なのです。受験生のころ「寝る前に覚えると記憶に残りやすい」と聞いたことはありませんか?あれはちゃんと脳科学的な根拠があることだったのです。
「体で覚える記憶」はまた別のところに
実は記憶には種類があります。「自転車の乗り方」「ピアノの弾き方」など、体が自然に動く感覚の記憶は、「小脳(しょうのう)」や「大脳基底核(だいのうきていかく)」という部位が担当しています。
これらは海馬があまり関係しない記憶です。だから、長い間自転車に乗っていなくても、体はちゃんと覚えているのですね。
言葉で思い出す記憶と、体で覚える記憶は、脳の中で別々の場所に保存されています。これを知ると、「体で覚えること」の強さがよくわかります。
感情が強いほど記憶に残りやすいのはなぜ?
「あの日の感動は今でも忘れられない」という経験はありませんか?これには「扁桃体(へんとうたい)」という部位が関係しています。
扁桃体は感情を処理する場所で、海馬のすぐ隣にあります。喜びや悲しみ、驚きなどの感情が動いたとき、扁桃体は海馬に「この出来事は大事だよ!」と信号を送ります。
その結果、感情とともに体験したことは、より強く長く記憶されやすいのです。楽しい学びや心が動く体験が記憶に残りやすいのは、このためです。
おわりに
今回は、記憶がどこに宿り、どのように育まれるかをご一緒に見てまいりました。脳の中には、あなたの大切な思い出や学びを守るための、精巧な仕組みが備わっているのです。日々の小さな体験も、眠りも、感動も、すべてが記憶を形づくる大切な糧となっています。どうか、その仕組みを知ったうえで、今日という一日をより豊かにお過ごしくださいませ。次回は「感情が生まれる場所」についてお話しいたします。感情とは何か、脳の中でどのように生まれるのか、どうぞお楽しみに。
