デザインシンキング講座【初級編】第15回:デザインシンキングで解決できる問題の種類
サマリ
デザインシンキングは万能な問題解決手法ですが、すべての問題に最適というわけではありません。この記事では、デザインシンキングが力を発揮する問題の特徴と、活用場面を具体的に解説します。適切な問題を選ぶことが成功の鍵になります。
詳細
デザインシンキングが得意な問題とは
デザインシンキングは、主に「複雑で不確実な問題」を解決するのに適しています。では、具体的にはどんな問題でしょうか。
第一に「ユーザーのニーズが明確でない問題」です。例えば、スマートフォンが登場する前、人々は「ポケットに入る電話」を欲しいとは言いませんでした。でもAppleはデザインシンキングのアプローチを使って、本当の欲求を見つけたのです。ユーザーが自分たちの本当の問題を自覚していない場合、デザインシンキングの出番です。
第二に「既存の解決策が不十分な問題」です。市場に類似製品は存在するけど、誰もが不満を抱えている状況ですね。このような場合、従来の改善では足りず、新しい視点が必要になります。
第三に「複数の関係者が関わる問題」です。顧客、従業員、パートナー企業など、異なる立場の人々の利益を同時に考える必要があるとき、デザインシンキングの共創プロセスが真価を発揮します。
失敗しやすい問題パターン
逆に、デザインシンキングが苦手な問題もあります。知っておくことで、方法論の選択を間違えずに済みます。
「答えが数学的に出ていることが明確な問題」には不向きです。例えば「3人の従業員で月100万円の売上をどう配分するか」という問題は、決まったルールで解決します。ここにデザインシンキングを持ち込む必要はありません。
「すでに市場データが明確にある問題」も要注意です。「東京都内で賃貸アパートの平均家賃は本当にいくらか」という情報収集の問題は、リサーチでいいのです。ユーザー調査を何度も重ねるデザインシンキングは、この場合はオーバーキルになってしまいます。
「組織の方針や法的制約で選択肢がほぼ決まっている問題」も向きません。スピード重視で決定権も少ない場面では、デザインシンキングの時間がもったいなくなります。
業界別・具体的な活用例
では実際に、どんな業界や場面でデザインシンキングが活躍しているのでしょうか。
医療業界では、患者体験の向上に使われています。例えば、ある大学病院が「待ち時間が長い」という課題に取り組んだ際、デザインシンキングを適用しました。単に診療速度を上げるのではなく、患者の心理的な待ち時間を短くするアプローチで、満足度が30%向上したという事例があります。
教育現場では、遠隔授業の問題解決に活用されています。2020年以降、多くの学校がオンライン授業を導入しましたが、デザインシンキングで「生徒の孤立感」という本当の問題を見つけ、スモールグループディスカッション機能の追加など創意工夫で改善しました。
飲食業界では、新しいサービスモデル開発に使われます。コロナ禍で需要が急落したとき、デザインシンキングで「高齢者が外出しにくい」という潜在ニーズを発見し、シニア向け配食サービスを立ち上げた企業も多いです。
製造業では、製品開発のアプローチが変わりました。従来は「技術で何ができるか」から考えていましたが、デザインシンキングで「ユーザーは何に困っているか」から始めることで、開発期間を20%短縮した事例もあります。
判断の基準:フレームワーク
自分たちの問題がデザインシンキングに向いているか判断するには、いくつかの基準があります。
まず「問題の定義が曖昧か明確か」を問いましょう。曖昧なほどデザインシンキングが有効です。次に「ユーザー視点での新しい発見の可能性があるか」です。掘り下げるべき観察が残っていれば、デザインシンキングの価値があります。
さらに「時間的余裕があるか」も大事です。デザインシンキングは早くても数週間、通常は数ヶ月かかります。緊急対応が必要なら、判断・実行型の問題解決の方がいいでしょう。
最後に「複数の利害関係者の意見が一致していないか」を見てください。意見が分かれていれば、共創プロセスで全員を巻き込む意義があります。
まとめ:適切な問題選びが重要
デザインシンキングは強力ですが、万能ではありません。複雑で不確実で、ユーザーの潜在ニーズが隠れている問題ほど、その価値が大きくなります。
皆さんが直面している問題は、本当にデザインシンキングが必要ですか。一度立ち止まって考える癖をつけることで、より効果的に問題解決できるようになります。
