デザインシンキング講座【中級編】第3回:カスタマージャーニーマップの作成と分析
サマリ
カスタマージャーニーマップは、ユーザーが製品やサービスと接する全ての接点を可視化するツールです。感情の起伏や課題を明確にすることで、改善すべきポイントが自動的に浮かび上がります。デザインシンキングの実践において必須のスキルです。
詳細
カスタマージャーニーマップとは何か
カスタマージャーニーマップ、略してCJMは、顧客が製品やサービスを認識してから購入、使用、その後までの全プロセスを図解したものです。
単なる行動の流れではなく、その過程での感情、思考、行動、課題、接点などを全て記録します。これにより、表面的には見えない深い課題を発見できるのです。
実際のビジネスでは、既存顧客の満足度向上が新規獲得の5倍の利益効果があるというデータがあります。CJMを使って既存顧客体験を改善することは、直接的な収益向上につながるのです。
作成前に準備すること
CJMを作成する際、最も重要なのはペルソナの設定です。ペルソナとは、あなたの理想的な顧客像のことです。
仮のペルソナではなく、実際のユーザーインタビュー、アンケート、データ分析から導き出す必要があります。複数のペルソナがいる場合、最も重要な層に絞ることをお勧めします。
次に、サービスの購買サイクル全体を把握します。これには認知段階から検討段階、購入段階、使用段階、さらには離脱や更新段階まで含まれることが多いです。
実際の作成ステップ
まずは横軸にカスタマージャーニーの各フェーズを書き出します。一般的には5〜8個のフェーズに分けられます。
次に、各フェーズでのペルソナの行動を具体的に書きます。「検索する」「比較検討する」「購入する」というように、実際の行動を記載することが大切です。
その下に、各フェーズでの感情を記録します。これは折れ線グラフで表現するのが効果的です。高さが高いほど満足度が高く、低いほど不満があるということです。
さらに顧客の思考や課題、利用する接点(メディアなど)を記載します。複数の層に分けて整理することで、それぞれの情報が一目瞭然になります。
感情曲線の読み方と意味
CJMの中で最も価値がある要素が、感情曲線です。この曲線が大きく下がる地点が改善の優先順位が高い場所です。
例えば、あるスマートフォンアプリの場合、登録段階で感情が大きく下がるデータが得られたとします。これは入力フォームが複雑、もしくはプライバシーへの不安があることを示唆しています。
実際、登録に7ステップ必要なアプリは、3ステップのアプリと比べて完了率が30%程度低いというデータもあります。このような数字的な根拠があれば、経営層への説得も容易になります。
複数フェーズにおける課題の整理
各フェーズの下部には、その段階での顧客の課題やペインポイントを書き込みます。ペインポイントとは、顧客が感じる困難や不満のことです。
重要なのは、これらの課題が本当に顧客由来なのか、それとも仮説なのかを区別することです。実際のユーザーインタビューから抽出した課題であれば、信頼性が高いです。
各課題の重要度を視覚的に示すため、テキストの大きさを変える、色分けするなどの工夫が有効です。
分析を通じた洞察の導出
CJMを完成させた後、その分析が本当の価値を生み出します。複数のペルソナのCJMを比較すると、セグメント間での大きな違いが見えてきます。
若い層と年配層では感情のピークが異なるかもしれません。もしくは感情が下がるフェーズが全く別の箇所かもしれません。このような発見こそが、カスタマー中心の改善案につながるのです。
また、感情が常に高い場合、実は顧客のニーズをまだ十分に理解していない可能性があります。より深い課題を引き出すため、追加インタビューを検討する価値があります。
組織全体での活用方法
CJMの最大の価値は、作成プロセスそのものにあります。営業、マーケティング、製品開発、カスタマーサービスなどの部門が一堂に会してCJMを作成することで、顧客理解が大きく向上します。
各部門が持つ顧客情報を統合することで、単一部門では気づかなかった課題が浮き彫りになるのです。これは組織の意思決定の質そのものを高めます。
CJMは一度作成したら完了ではなく、四半期ごとに新しい顧客データを反映させて更新することをお勧めします。市場やユーザーニーズは常に変化しているからです。
