2026年07月23日の量子コンピューティング動向まとめ
サマリ
2026年、量子コンピュータは「魔法」から「実用的な道具」へと進化しました。量子ビット数の競争から「エラー低減」という質的競争へシフト。日本の理研が144量子ビットの「叡II」をクラウド提供開始、富士通・理研は年度内に1,000量子ビット機を目指しています。市場規模は2025年の18.6億ドルから2030年には71億ドルに拡大予想。実用化への道が急速に現実味を帯びています。
詳細
量子コンピュータ開発の転換点
2026年最大のポイントは、発展段階の転換です。これまでは「いかに多くの量子ビットを積み重ねるか」という量的競争が中心でした。しかし今年に入ると、「いかにエラーを減らして精度の高い計算をするか」という質的競争へシフトしました。量子ビットはコンピュータの計算素子です。普通のコンピュータは0か1どちらかの値を持つビットを使いますが、量子ビットは0と1を同時に持つ不思議な性質があります。この特性のおかげで、複数の計算を一度に進められるのです。
日本の量子コンピュータ産業が加速
国産量子コンピュータの躍進が目立ちます。理化学研究所と富士通は2025年4月に世界最大級の256量子ビット超伝導量子コンピュータを開発しました。さらに2026年3月には、144量子ビットの「叡II」のクラウドサービスを正式開始。企業や研究機関がインターネット経由で利用できる環境が整備されました。初号機の「叡」の利用者が増加傾向にある点も注目です。
一方、富士通・理研は2026年度内に1,000量子ビット機の稼働を目指しています。2030年には1万量子ビット超を目標としており、実用段階への急速な接近が見られます。
世界の主要企業の進展
Google は2024年12月に「Willow」チップを発表し、量子ビット数を増やすほどエラー率が下がる技術を実証しました。従来は逆でしたから、これは革新的な成果です。IBM は「量子優位性の達成(2026年目標)」から「フォールトトレラント量子コンピューティング(2029年目標)」へと段階的に進むロードマップを公開。金融大手HSBC との実証実験でも成功を重ねています。
NTT は光量子コンピュータの開発を推進。2024年に汎用型の光量子計算プラットフォーム開発に成功しました。量子コンピュータの方式は複数あり、超伝導方式以外の選択肢も広がっています。
ハイブリッド設計が主流へ
重要なトレンドとして、量子コンピュータが単独で動作するのではなく、従来のスーパーコンピュータやAI との組み合わせで使う「ハイブリッド設計」が確立されました。量子プロセッサを特定のタスクに特化させ、それ以外は古典的なコンピュータに担当させる方式です。この組み合わせにより、現実的で高い価値を生み出すようになってきました。
今後の展望
市場規模は確実に拡大します。2025年の市場規模は前年比24.23%増の18.6億ドルに達し、2030年には最大約71億ドル規模に達すると予測されています。マッキンゼーの試算では、2035年までに量子技術がもたらす経済価値は1兆ドルを超えるとされています。
応用分野の広がりも急速です。創薬や素材開発の分野では、分子の振る舞いを正確にシミュレーションできる量子コンピュータの価値が極めて高いです。金融機関も最適化計算での実用化を進め、JPモルガンやゴールドマン・サックス、日本では三菱UFJフィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループなどが研究部門を強化しています。
2026年から2027年にかけては、1,000量子ビット超のシステムが各社から登場する見込みです。2028年から2030年は、実験段階から実用段階への過渡期となるでしょう。化学・材料計算、創薬、金融最適化など、大きな経済価値を生む応用が次々と現れる可能性があります。
ただし課題も残ります。実用的な計算には1万個の量子ビットが必要とされており、そこまでの道のりはまだあります。超伝導方式は量子ビット数を増やすと装置が大型化する課題も存在します。しかし、各国が国策として投資を加速させており、民間企業の本気度も高まっているため、2030年前後には産業利用が本格化する見通しが強まっています。
