はじめに

さあ、第9回の講座の内容にまいりましょう。今回は、生成AIの「記憶と検索」を支える重要な仕組み、ベクトル検索についてお話しいたします。言葉の意味を数値の世界で捉えるという、少し不思議でありながらも非常に奥深いテーマです。難しそうに聞こえるかもしれませんが、どうぞご安心くださいませ。丁寧にひとつひとつ解きほぐしてまいりますから、最後まで一緒に歩んでいただければ嬉しゅうございます。

サマリ

ベクトル検索とは、言葉や文章の「意味」を数値の配列(ベクトル)に変換し、意味的な近さで情報を探し出す技術です。従来のキーワード検索では拾えなかった文脈や類似概念を捉えられる点が特長で、生成AIと組み合わせることでより精度の高い情報活用が実現します。

詳細

キーワード検索との違いから理解する

まず、従来の検索との違いを整理しておきましょう。キーワード検索は、入力した文字列と完全に一致する、あるいは部分的に一致するデータを探す仕組みです。「犬」と入力すれば「犬」という文字を含むデータが返ってきます。

一方、ベクトル検索では「犬」と入力しても「ペット」「ワンちゃん」「柴犬」といった意味的に近い語も検索結果に含まれてきます。表現が違っても、意味が近ければ近いものとして扱う、それがベクトル検索の本質です。

ベクトルとは何か――言葉を数値に変換する仕組み

「ベクトル」とは、複数の数値を並べた配列のことです。たとえば「猫」という言葉が [0.12, 0.85, 0.33, ……] といった数百〜数千次元の数値列に変換されます。この変換を行うのが、埋め込みモデル(エンベディングモデル)と呼ばれるAIです。

重要なのは、意味が近い言葉ほど、変換後のベクトルも似た値になるよう学習されているという点です。「猫」と「ネコ」は非常に近いベクトルになり、「猫」と「自動車」は遠いベクトルになります。この距離の近さが、検索の精度を生み出しています。

類似度の計算――コサイン類似度を知る

ベクトル同士の近さを測る際によく使われるのが、コサイン類似度です。二つのベクトルが向いている方向の角度を用いて、-1から1の値で類似度を表します。値が1に近いほど意味が似ており、0に近いほど無関係であることを示します。

このコサイン類似度の計算によって、クエリ(問い合わせ文)に対して「最も意味的に近いデータ」を順位付けして返すことができます。単純な文字の一致ではなく、意味の距離で並べ替える、という発想の転換がベクトル検索の核心です。

ベクトルデータベースの役割

実際のシステムでは、大量のデータをあらかじめベクトルに変換しておき、専用のデータベースに格納しておきます。これをベクトルデータベースと呼びます。代表的なものとして、ピネコーン、ウィーベイト、クロマなどが知られています。

検索時には、クエリもベクトルに変換し、データベース内のベクトルと類似度を比較します。数百万件のデータの中から高速に近似値を探し出すため、階層的ナビゲーショングラフなどの近似近傍探索アルゴリズムが活用されています。

生成AIとの組み合わせ――検索拡張生成(RAG)への接続

ベクトル検索が特に注目を集めているのは、生成AIとの組み合わせによる活用、いわゆる検索拡張生成(RAG)においてです。生成AIは学習データ以外の最新情報を知りません。そこでベクトル検索を使って関連文書を取得し、その内容をプロンプトに組み込むことで、正確で文脈に沿った回答を生成させることができます。

社内文書への問い合わせ、カスタマーサポートの自動化、専門知識を要する業務支援など、幅広い分野でこの組み合わせが実用化されています。ベクトル検索は、生成AIを「現実の情報」とつなぐ橋渡し役として、今や欠かせない技術となっています。

おわりに

言葉を数値に変え、意味の距離で世界を測るベクトル検索の世界、いかがでしたでしょうか。知識が積み重なるごとに、生成AIの全体像がひとつひとつ鮮明に見えてくることでしょう。その感覚を大切に、どうか焦らずご自分のペースで歩みを続けてくださいませ。次回の講座では「マルチモーダルAIとは」をテーマに、文章だけでなく画像や音声をも理解するAIの世界へとご案内いたします。どうぞお楽しみに。

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oyashumi
5億年前から来た全知全能の絶対神。 アノマロカリ子とハルキゲニ男を従え、 現代のあらゆる知識を手に入れようとしている。 生成AIは神に仇なす敵だと思っているが その情報に踊らされていたりもする。 カリ子とゲニ男からの信頼は篤い。